| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-305J (Poster presentation)

野生絶滅種コシガヤホシクサの野生復帰にむけた生育環境の検討

*市川沙央里,中村徹,上條隆,田中法生,筑波大学森林生態環境学研究室

水生植物コシガヤホシクサ(ホシクサ科)は1994年に野生絶滅したが、原因は水位管理方法の変化によると考えられている。そこで最後の自生地である茨城県下妻市砂沼では2008年度から水位管理が絶滅前の状態に戻されるとともに播種等による野生復帰が行われている。

これまでの現地播種の結果では発芽数は多いが開花・結実まで至る個体は非常に少なく、調査区内の一部の場所に限られることから生育地の環境が個体の生存に強く影響を与えていると予想された。

そこで本研究では発芽から開花・結実までの個体数変動を調査し(1)定着に関わる要因として土性、比高に着目し生育環境条件の検討を行うこと、(2)減少過程を明らかにすることを目的とした。

砂沼の元自生地に試験区を設置し6880粒/㎡の播種を行い、水位上昇前の発芽数、4月から11月までの間の個体数(2週間に1回測定)、最終生存個体数を測定した。生育環境条件として比高、土壌の三相分布および粒径組成を調べた。

土壌水分が低く、粗い粒径の割合が高く、中間的な比高をもつ立地で最終個体数が高い傾向がみられた。発芽は4月から6月上旬にかけて試験区ごとに発芽時期が異なっていた。個体数については6月下旬から8月にかけて減少し、9月以降は安定していた。今後の課題として6月下旬から8月にかけての減少要因の解明が挙げられる。


日本生態学会