| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-312J (Poster presentation)
2008年に生物多様性基本法が策定され、地方自治体の市町村レベルにおいてもその戦略策定が求められるようになった。本研究では比較的里地里山の自然環境が良好に残存している地方小都市の長野県駒ケ根市を対象地として、二次的自然の代表である水路における水生植物の過去と現在の分布や立地環境条件、管理等の人との関係性の比較から現状と変化の要因を明らかにし、その保全策の検討することを目的とした。
調査は2011年に駒ケ根市の5地区を調査地として実施した。水生植物の植生調査は調査方形区(1m2)を計44プロット設定した。対象種は自生種のバイカモと外来種のコカナダモとして、被度と群度、植被率を測定した。同時に立地環境調査として、水路・河川の構造や底質等や、水質を測定、記録した。聞き取り調査では、5地区の15名を対象とし、過去(主には1940年代半ば)における対象種の生育場所や個体群の規模、水路・河川の状況、管理等について、対面式で実施した。また、現在の状況についても質問した。
その結果、自生種のバイカモの分布は1940年代半ばに比べ、現時点での出現率は50%に減少した。一方、外来種のコカナダモは1940年代半ばには出現しなかったが、現在の出現率は25%であった。生育環境の比較では、1940年代半ばのバイカモが生育していたプロットの底質は全て土か砂利であった。また、現在のバイカモとコカナダモの生育が確認されたプロットの底質も1箇所を除きすべてが砂利であった。その一方で、現在、両種の生育が確認されなかったプロットの底質はコンクリートが70%を占めていた。これらのプロットでは、聞き取り調査から1950年代半ばから1990年代はじめにかけて水田の区画整理や市街地の拡大に伴い改修が行われ、底質がコンクリート化されたことが明らかになった。