| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-314J (Poster presentation)
保護区等の検討のために生物の分布を把握する際に有効な手段として、統計的な分布推定モデルが広く活用されている。気候・地形・土地利用等の環境情報に基づいた分布推定モデルを用いることで、潜在的ハビタットを推定し、踏査で見逃された生息地を補完することが出来る。また、将来の土地利用変化・気候変動等による分布変化の予測にも応用することが可能である。
近年、分布推定手法は目覚しい発展を遂げ、Maxent, MARS, randomForest等の新しい手法が、高い推定精度を持つと評価されている。しかし、生物分布データの多くは博物館の標本等の在情報のみで不在情報がない場合が大半である。このような場合には、在情報がない地点をbackgroundやpseudo-absenceとしてモデリングを行うが、調査範囲に偏りがあって、生息可能性が高い環境条件にも関わらず見逃された範囲をbackgroundとしてしまうと、高精度とされるモデルでも、推定に大きな偏りが生じうることが最近明らかにされた。また、在情報が極端に少ない希少種については、生育に適した環境条件をモデルで十分に絞り込むことができず、分布範囲を過大に推定してしまうことが多い。
本発表では、日本国内で最も充実した生物分布情報の1つである、維管束植物レッドリストの基本データを用い(非公開を前提に日本植物分類学会絶滅危惧種問題専門委員会の許可の下で使用)、以下の3点に着目して絶滅危惧植物の分布推定手法の検討した。1.気候帯も地形も変化に富んだ日本列島において、Maxent等の手法がどれくらい有効か。2. backgroundの選択によって推定がどれくらい影響を受けるか。3. 在情報が少ない希少種について、生息地が類似した別種の分布情報を援用することで分布推定を改善することができるか。