| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-321J (Poster presentation)
近年、生物多様性基本法では地域の生物多様性の保全を図るため、地方自治体の市町村単位での戦略の策定が求められている。本研究は里地里山が比較的残存した地方小都市の長野県駒ヶ根市において、社寺林及び緑地における自生林床植物と移入種の分布から地域の生物多様性を評価すると共に、立地環境条件や土地利用の変化との関係性を考察することから、生物多様性の評価手法および具体的な保全策を検討することを目的とした。
調査は2011年の9月から12月に実施された。調査地としては、規模や管理方法、条件の違う4つの社寺林および緑地が選定された。背後の山林と一体になった寺叢林をもつA、市街地の中に孤立しているが規模が比較的大きなB、孤立し規模も小さく、ほぼ植林された樹種で構成された社寺林としてCとDを選定した。調査地毎に3次メッシュを基準とした50m×50mのメッシュを設定し、計81メッシュで調査を行った。
分布調査の対象とした自生林床植物は森林性の草本植物13種で、種子散布能力が低いアリ散布植物であるウスバサイシンやミヤマエンレイソウ等を含んでいる。移入種としては緑化・園芸由来のアオキとシラカシを対象とした。分布調査はメッシュ毎に踏査しながら対象種の優占度(7段階)と個体群の規模(5段階)を測定、記録した。また、対象種の分布地点を携帯型GPSレシーバーを用いて測位、記録した。同時に立地環境条件として、メッシュ毎に地形および土壌水分、上層の開空度、リタ―層の厚さ等を測定し、記録した。また上層と下層の優占種を記録した。
その結果、自生林床植物は規模が大きく奥山と連続しているAで7種であり、最も多かった。Aでは移入種アオキの出現頻度が高かったが、自生林床植物との間に分布の相関はなかった。移入種の分布は水路や水辺周辺に多く分布する傾向にあった。