| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-323J (Poster presentation)
ミヤマシジミは、コマツナギを食餌植物とする河川敷等に生息する蝶で絶滅危惧種に指定されている。しかし近年、河川改修や外来植物の侵入などの影響により、ミヤマシジミの生息環境の悪化が危惧されている。こうした希少な蝶の保全に際しては、その生息地の環境を適切に把握することが求められるが、蝶は、日光浴や休息などの行動パターンによって必要とする環境が異なる。そこで本研究では、ミヤマシジミの生息地及び生息地内での行動パターンがどのように植生の影響を受けるのか、外来植物であるシナダレスズメガヤの影響を含めて明らかにすることを目的とした。調査は鬼怒川氏家大橋上流左岸の河川敷の2か所で行い、それぞれ7m×40mの調査区を2及び3箇所設定した。各調査区において、ミヤマシジミについてはトランセクト調査により、行動パターン、位置、雌雄を記録し、植生については、植生を裸地、シバ、コマツナギ、シナダレスズメガヤ、蜜源植物、その他のイネ科草本、その他の非イネ科草本、低木に分類してそれらの被覆率を記録した。ミヤマシジミ及び植生の記録は1m×1mのコドラート単位で行った。これを元に、ミヤマシジミの出現確率についてはポアソン回帰モデルを、行動パターンについては多項ロジットモデルを用いて植生との関係を解析した。その結果、1m以上のシナダレスズメガヤ及び50cm以上のその他のイネ科草本の被覆率の増加に伴い、ミヤマシジミの出現確率が減少することが認められた。行動パターンに関しては、休息は日光浴より1m以上のイネ科草本の被覆率が高い場所を好み、産卵に関する行動は他の行動パターンよりもコマツナギや裸地、シバが多い場所でみられる傾向が認められた。