| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-326J (Poster presentation)
高標高域へのニホンジカの利用拡大による森林生態系への影響が危惧されている。ニホンジカ等、野生動物を記録する手法として自動撮影カメラの利用は広まっているが、標高2000m付近で積雪期を含め撮影した例は少ない。標高別に年間を通じてニホンジカと積雪深の動態をカメラによりモニタリングすることは、高標高域利用の動態を明らかにするために有効であると考えた。
自動撮影カメラ2台一組として(野生動物用および積雪深計測用)、富士山亜高山帯の西斜面、3標高別1800m、2000m、2200mに各4セット設置した。バッテリーおよびメモリーカードを毎月交換し、可能な限り撮影を1年間継続した。月別、標高別の相対的な撮影頻度を比較した結果、ニホンジカは冬季前に頻度の増加が見られた後、冬季は標高1800m以外のカメラでは記録されなかった一方、カモシカは冬季を通じて2000mのカメラで最も頻度が高かった事等、季節、標高、積雪深による利用頻度の違いが確認された。また、ニホンジカの角の形態やサイズ等を判別できる画像を多数得られたことから、個体のライフステージ(幼獣、成獣、オスの発達段階)や、社会行動(単独、親子、縄張り行動等)との関わりをある程度推定可能であることが分かった。高標高域は継続的な観察調査が容易でないこともあり、ニホンジカの利用拡大が静かに進んでいく可能性がある。高標高域におけるニホンジカや他の哺乳類の動態を把握する手法として、自動撮影カメラによるモニタリング手法は有用性が高いと考えられた。