| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-327J (Poster presentation)
森林における択伐施業は、ササが繁茂するなどして、しばしば植生を単純化させているように見える。実際に林床の種多様性は劣化しているだろうか。北海道中央部の針広混交林において、1.04haの択伐区画と1haの対照区とを5年間観察し、林床の維管束植物の種多様性および林内分布に重要な環境要因を調べた。
期間中に択伐区では、対照区よりもクマイザサの被覆が著しく増大した。一方、種数およびShannon関数については、対照区との差が見られなかった。また、主な40種それぞれの林内の分布について、択伐の有無、作業による地表撹乱、沢沿い、光量、ササとそれを含む植生被覆、および過去の分布(すなわち個体群の継承性)を説明変量に用いて、一般化線型モデル(GLM)を構成した。説明変量を総当たりで組み合わせたうち、最小のAICを得るモデルにおいて有意(p<0.05)な変量を、対象種の分布に重要な要因とみなした。その結果、多くの種の分布について、ササの被覆量ないし光量が重要な要因であり、正負の関係は種ごとに異なっていた。また過去の林内分布が相対的に重要であり、択伐の有無や地表撹乱と関係のある種は、検出されなかった。
以上から択伐後の5年について、ササが繁茂する一方で林床の種多様性が劣化したとは言えない。それぞれの種の林内の分布はササや光との関係が見られるものの、択伐の直接的な影響は見られなかった。林床植物の多くは多年生であるため、少なくとも直ちには影響は現れにくいと考えられる。