| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-269J (Poster presentation)
出生率は適応度に最も直接的に影響するため,その低下により生じる少子化は,ヒトの行動の進化を考える上で非常に興味深い現象である.本研究では,内閣府政策統括官(共生社会政策担当)が2010年に実施した「少子化社会に関する国際意識調査」の個別データの分析を行った.
日本を含む先進5ヶ国(日本・韓国・アメリカ・フランス・スウェーデン)において,すでに繁殖を終えていると仮定される45歳以上の人々の子どもの数の分布は,いずれも2人がピークであった.また,欲しい子どもの数の分布についても同様に,年齢によらずいずれも2人がピークであった.このような特異な分布がもつ究極要因を考察するための前段階として,初婚年齢・収入・最終学歴・生活の満足度といった要因や,欲しい子どもの数・子どもを必ずもつべきだと思うかどうか・経済的にどこまで面倒をみるべきだと考えているかといった意識が,実際の子どもの数に与える影響を一般化線型モデルにより探索したところ,欲しい子どもの数のみが有意に影響していた.
次に,実際の子どもの数の分布がどのように再現されるのかを,数理モデルを作成して検証した.欲しい子どもの数の質問項目を用いて,(1)意思決定のパターン(毎年更新/最初に完了),(2)実際の子どもの数がi人からi+1人の段階に進むことができる割合(すべて同じ/0人から1人の段階のみ異なる),(3)男性/女性の意思,の組み合わせがそれぞれ異なる数理モデルを作成し,データセットから得られた分布(実際の分布)と,数理モデルから得られた分布の比較を行った.当日は結果の詳細に触れつつ,今後の展望を含めた議論をしたい.