| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-271J (Poster presentation)

ホソヘリカメムシのオス間闘争と性的二形

*洲崎雄, 岡田賢祐, 岡田泰和, 宮竹貴久 (岡大院・環境・進化)

性選択はオス間競争やメスの配偶者選択の過程を通じて、行動、生理や形態など、雌雄の様々な形質の進化に寄与している。例えば、オス間競争は誇張された角や大顎などの武器形質のような、オスの形態に強い影響を与えている。この誇張された形質がメスの配偶者選択に有利に働くとされていたが、近年、不利に働くこともあることが報告されている。従って、これらの形質間の関係を調べることは、オス間競争とメスの配偶者選択を理解する上で非常に重要である。

そこで本研究では、誇張された後脚を持つホソヘリカメムシRiptortus pedestrisを用いて、体サイズおよび後脚サイズと、後脚サイズのアロメトリーについて雌雄間で比較するとともに、武器形質がオスの闘争行動と配偶者選択に与える影響を調べた。その結果、雌雄の体サイズに有意な違いは見られなかったが、後脚サイズはオスの方がメスよりも有意に大きくなっていた。同様に、後脚サイズのアロメトリーの傾きも、オスの方がメスよりも有意に大きくなっていた。また、体サイズが大きく、より長い後脚を持つ個体がオスの闘争行動において有利であることが分かった。したがって、ホソヘリカメムシにおいて、後脚サイズに顕著な性的二型が存在すること、そしてこの形態的二型はオス間競争の結果であると考えられた。一方、より長い後脚を持つオスは、交尾に至るまでにより長い時間を要し、単位時間当たりの求愛行動頻度も低かった。この結果から、メスは競争に強いオスを好まないと考えられる。したがって、本種におけるオス間競争と配偶者選択の選択圧は、拮抗的な関係にあることが示唆された。


日本生態学会