| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-272J (Poster presentation)

ノネコにおける同種の他個体に対するフンの信号的機能

*谷あゆみ(九大・シス生),石原茜(京大・野生研),粕谷英一(九大・理),村山美穂(京大・野生研)

動物は同種他個体の情報を見た目・におい・鳴き声など様々な手段によって受け取っている。そのなかでもにおいは長く残るため、個体同士に時間的・距離的な隔たりがあっても情報を得られるという点で重要な働きをもつ。哺乳類では、尿や分泌物のにおいから他個体の生理状態や社会的地位、性別などの情報を得ることで同種他個体とのコミュニケ―ションができると考えられている。

ノネコ Felis catus でも個体間の情報伝達に尿が重要な役割を果たしていることが分かっており、尾をあげ背後にスプレー状の尿をかけるスプレー行動にはオスによるマーキング機能があり、スプレーのにおいから他個体の健康状態に関する情報を得ていると考えられている。

フンも尿と同じく揮発性物質を多く含み、尿よりも食物に関するにおいが多く含まれる。さらに、長時間同じ場所に残ることから、時間的に長くシグナルとして利用可能なものであると考えられる。フンの機能に関する少数の研究で、性別や年齢などでフンの構成成分が異なったり、実験室内の家畜で血縁者のフンへの反応が大きかったことが報告されている。しかし野外での観察も含め、実際に動物のフンへの反応を研究した例はほとんどない。

ノネコのフンに関しては先行研究から、グループ内外でフンに対する反応が異なり、においを嗅ぐことで個体の情報を得ている可能性があることがわかった。

本研究では、フン生産者と嗅ぐ側の関係によってフンへの反応時間が異なり、フンを情報伝達手段としている可能性があるかを検証する。今回は①グループ内個体のフンとグループ外個体のフンへの反応時間②グループ内で特に個体間距離が近い個体のフンとそうでない個体のフンへの反応時間③血縁個体のフンと非血縁個体のフンへの反応時間④異性のフンと同性のフンへの反応時間を比較する。


日本生態学会