| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-276J (Poster presentation)

ミツバチの社会性がもたらすコロニー環境調節機構 -扇風行動の時空間特性-

*西村直也,池野英利,堅田優希,大橋瑞江(兵庫県立大・環境人間)

ミツバチコロニーでは、ダンス言語による餌場情報の伝達、飛翔筋の伸縮による発熱を利用した巣の温度調節など、周囲の環境変化に適応するための集団的行動が観測されており、これらがコロニーの社会性を特徴づけている。巣内において複数の個体が同調して一方向に羽ばたく扇風行動についても、巣内の換気、生育に適した巣内温度の維持などを目的とする特異的な社会性行動の一つと考えられている。

扇風行動に関しては、これまで温度やCO2濃度といった巣内環境を人為的に変動させた時の行動特性を調べる実験が行われてきたが、この場合は環境の変化が極端かつ不自然であった。一方、自然な外気温の変化に伴う扇風行動の発現パターンや、この時の行動が巣内環境に及ぼす影響を評価した研究は未だ見られない。そこで本研究では、扇風個体数の時間的、位置的な変化を日単位で計測し、環境要因の日変動との関連を調べた。

実験は室内に設置した観察巣箱により行った。3台の観察巣箱にセイヨウミツバチの2枚の巣板からなるコロニーを導入し、パイプを通じて自由に野外へ出られる状態で飼育した。巣箱の観測面に透明フィルムを用いることで、サーモグラフィによる熱画像の取得及び目視での行動観察を可能にした。巣内の温湿度、CO2濃度は、巣箱上部に設置したセンサーにより取得した。また、観測面を10区域に分けて扇風個体の位置や数を1時間毎に記録し、同時に巣板上の個体分布をデジタルカメラで、温度分布をサーモグラフィで撮影した。

本実験により、ミツバチコロニーが時間帯によって扇風行動を行う位置や個体数を変えていることが示された。2台の巣箱においては、日中に巣口から遠く離れた位置で扇風を行うという行動が顕著にみられた。さらに、これらの巣箱での扇風個体数の変化は、温湿度やCO2濃度と有意に相関があることが示された。


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