| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-277J (Poster presentation)
モンゴル草原における遊牧の歴史は3000年以上もあるといわれている。そのため遊牧がモンゴル草原の自然を守ってきたといえるだろう。しかし、1990年以降の市場経済の移行に伴い、人口増加と家畜の私有化による家畜頭数の増加、カシミヤ生産のためによる家畜の中のヤギの割合の増加などの変化が起きている。また、モンゴル高原南部にあたる中国内モンゴル自治区では、1980年代の生産責任制による草原と家畜の私有化によって、草原(土地)を個人所有する定住化が進み、伝統の遊牧から定住型放牧へと移行した。家畜の増加や家畜構成の変化は、放牧圧を増加させ、草原の退化が進む要因となっている。内モンゴル自治区では、定住化に伴う柵の影響により小範囲での放牧によって過放牧が起き、草原の退化と砂漠化が進行している。そこで、本研究はGPSを用いた家畜の行動パターンの追跡によって、モンゴル国の遊牧と内モンゴル自治区の定住型放牧による草原利用方式の違いについて、草原植生の変化から考察し、草原の持続可能な利用について提案することを目的とした。
調査はモンゴル国(3つのプロット)と中国内モンゴル(4つのプロット)において、1プロットについて2回、ヤギ(内モンゴルではヒツジ)にGPSを取り付け、日の出から帰ってくるまでの行動(測位間隔10秒)を記録した。GPSのデータをもとに食草速度を算出した。その結果からモンゴルで平均1.32±0.79kmh-1、内モンゴルで平均1.46±0.87kmh-1であることが分かった。また内モンゴルでは、草原の退化が進んでいることから家畜(ヒツジにも関わらず)の食草速度が速くなっていると考えられる。