| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-279J (Poster presentation)

ヤマトシロアリの脱皮補助行動

*寺田光宏,北出理(茨城大・理)

シロアリは社会性昆虫であり、ワーカー、ソルジャー、ニンフ、生殖虫などのカストによりコロニーが構成される。コロニー内では、個体間でグルーミングや栄養交換行動などの利他的行動が行われる。不完全変態昆虫であるシロアリは、他個体が脱皮する際に、それを補助する利他的行動を行う可能性がある。しかし本当に補助を行っているのか、行う場合どのカストがどのように行うか、補助が脱皮の成功率に影響を与えるかどうかなどについては未知である。本研究ではヤマトシロアリを材料に、脱皮の際の補助行動について調べた。

まず、野外から採集した本種のコロニーから個体を抽出し、餌に染色剤(ナイルブルーA)を混ぜることで、脱皮が近づき採餌をやめたワーカー個体を判別した。この個体を(1)単独で、(2)ワーカー5個体と共に、(3)ソルジャー5個体と共に飼育し、脱皮に成功した個体数と、死亡や触角の明らかな欠損など、正常な脱皮ができなかった個体数を調べた。また、脱皮間近のワーカーをワーカー・ソルジャーと共に実験容器に入れ、ビデオカメラで行動観察した。

共に飼育する他個体の有無とカストの違いは、脱皮に成功する個体数に有意な効果をもたらした。行動観察の結果、脱皮時には、巣内の他のワーカーとソルジャーが、脱皮殻を引っ張る行動や、腹部、脚、頭、触角などに残った脱皮殻をなめとるようなグルーミング行動を行うことがわかった。防衛に特化していると考えられてきたソルジャーもワーカー同様、高頻度で脱皮の補助を行う。脱皮個体がうけるグルーミングは、脱皮中は1回あたりの時間が長い傾向が見られ、脱皮後は短時間のグルーミングを頻繁に受ける傾向が見られた。またワーカーはソルジャーと比べ、1回あたりのグルーミング時間が長い傾向がみられた。シロアリでは、脱皮の際に巣仲間による補助が行われ、その補助が脱皮の成功率を上げるといえる。


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