| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-281J (Poster presentation)
オオハリアリの日本とアメリカにおける種内攻撃性の比較
小西宏基(岡大・農)、辻和希(琉球大・農)、松浦健二(岡大院・環境)
多くの侵略的外来アリ種は、コロニー間での敵対性が低く、個体群全体が単一の巨大コロニーとなる性質(融合コロニー制)を持つ。融合コロニー制を持つことにより、種内競争に関連したコストを減らし、より大きなエネルギーをコロニーの成長、採餌、資源防衛、種間競争に注ぐことができる。その結果、在来種アリの個体数を減らす、他の生物を大量に捕食するなど、侵入地の生態系に大きな影響を与えるということが理論的に考えられる。また、侵略的外来アリ種では原産地と侵入地で行動、社会構造、生殖、遺伝構造ことが知られており、これらの変化が侵略性をもたらしている。したがって、原産地と侵入地での様々な形質の比較が侵略種へと至るメカニズムを解明することにつながる。
オオハリアリPachycondyla chinensis は、日本が原産地の個体群が北東アメリカに侵入し、侵略種化している。従来研究されてきた侵略的外来アリ種は、重度の撹乱環境に生息しているが、本種は非撹乱環境(森林の朽木中など)に生息している。本研究では、本種の原産地と侵入地でのコロニー間のワーカーの行動を観察する(攻撃性試験)ことにより融合コロニー制の有無について検証した。なお、原産地として岡山で、侵入地としてノースカロライナで本種を採集した。
攻撃性試験の結果、コロニー内での個体間の行動はコロニー間での個体間の行動よりも攻撃性レベルは低かった。このことから、本種はコロニーの識別を行っていることが示唆された。しかし、コロニー間での個体間の行動でも警戒行動は見られたが、攻撃行動に至ることはなかった。この傾向は原産地と侵入地で変化しなかった。