| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-285J (Poster presentation)
本研究は、インドネシア、スラウェシ島南西部のカレンタ自然保護区に生息する野生ムーアモンキー(Macaca maurus)を対象に、群れの空間的まとまりを維持する至近的なメカニズムを検討した。群れ生活をする動物は、アクティビティを同調させながらまとまりを保つ。ムーアモンキーの群れでは、オスとメス、オトナとコドモといった異なる性年齢クラスに属する個体が、まとまりを保ちながら採食し、休息し、移動する。本研究は、個体のアクティビティと地上にいるか樹上にいるかという空間位置を、他の個体のアクティビティと空間位置および群れの広がりとの関連で分析した。本研究の対象は、1988年より個体識別に基づいた観察がおこなわれていた、Bグループと呼ばれる群れである。群れの構成は、オトナオス4頭、オトナメス11頭、ワカモノオス6頭、ワカモノメス4頭、コドモオス5頭、コドモメス5頭の計35頭であった。群れを構成するすべての個体のデータは5分間隔のスキャンサンプリングで収集された。5分の間に発見された個体の名前、アクティビティ、空間位置、近接個体および群れの広がりが記録された。群れのαオスについては、個体追跡による連続記録で、すべての行動と近接個体、30秒間隔のスキャンサンプリングで、アクティビティ、空間位置、移動距離、群れとの位置関係が記録された。分析の結果、野生ムーアモンキーの群れのアクティビティの同調において、性年齢クラスによる与える影響の違いがあり、その影響は、群れ全体が休息するときや移動するときで異なるものである可能性が示唆された。