| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-338J (Poster presentation)

札幌市における人里植物3種とその近縁外来種の生態分布

*鈴木嵩彬, 大原雅 (北大・院・環境科学)

人里植物は、草刈り、踏みつけなどの人為的な攪乱を含む人間の生活や管理の影響を受ける環境を主たる生育地とする植物群である。近年、日本には多くの外来植物の侵入と定着が認められるがその多くが人里植物である。固着性の植物の分布はその種の持つ生活史特性と生物的・物理的環境との相互作用によって決定される。本研究では、外来人里植物の侵入と定着に着目し、外部形態および基本的な生活史が類似していると考えられる同属内の在来種と外来種を対象とし、その生活史特性と物理的な環境要因の比較調査を行った。

在来種とその近縁外来種の対として、エゾタンポポとセイヨウタンポポ、ミチヤナギとハイミチヤナギ、オオバコとセイヨウオオバコを対象種とした。調査は札幌市内でこれらの種の純群落および混生群落で行った。生育地の物理的環境要因として土壌含水率と土壌硬度を、生活史特性として主に種子繁殖形質(種子数、種子重)を調査した。

その結果、在来種と外来種の間で顕著な違いが認められたのは、ミチヤナギとハイミチヤナギ、およびオオバコとセイヨウオオバコであった。具体的には物理的環境要因に関して、在来種は外来種よりも、より湿潤で軟らかい土壌に生育する傾向が認められた。一方、生活史特性に関しては、在来種が外来種より重い種子を生産する傾向を示し、種子数では、オオバコとセイヨウオオバコで、外来種がより多くの種子生産を行う傾向を示した。以上より、外来人里植物は、在来種とは異なる生育地環境や生活史特性を持ち、特にそれらの生態分布は、在来種との直接的な競合よりも、開発などによる人為的攪乱が大きく、より乾燥した生育地に適した生活史特性によることが示唆された。


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