| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-345J (Poster presentation)
霧ヶ峰は採草地として利用されていた半自然草原が分布し、多くの草原性草本植物の生育地として生物多様性を維持してきた。しかし近年、外来植物の侵入定着が在来植生に影響を与えている。発表者らは霧ヶ峰における外来植物の侵入、定着を抑制し、在来植生を復元する目的で、2008年9月から刈り取りおよび播種実験を実施してきた。前回は刈り取り2年目について発表した(日隈ら、2011)が、今回は3年目の結果および昨年度設定した抜き取り処理の結果についても考察する。
本研究は調査地域の中でも特に外来種のヒメジョオン類やマツヨイグサ類の優占が著しい強清水(標高1680m)において実施した。駆除対象種はヘラバヒメジョオンとメマツヨイグサとした。処理区には年1回刈り取り(秋季のみ)と、年2回刈り取り(秋季、翌年夏季)、年1回抜き取り(夏季のみ)、無処理の4区毎に、在来種の播種の有無で計8区を設定し、反復数は3とした。各プロットは2m×2mとし、中心の1m×1mで群落調査を行った。立地環境条件を把握するため、相対光量子密度と土壌含水率を各プロット5点で測定し平均値を求めた。刈り取りは植物体の地際から剪定鋏で丁寧に刈り取った。抜き取りは他の植物を傷つけないよう注意しながら根ごと抜き取り、植物体は後日、乾重を測定した。
実験の結果、昨年の発表と同様にヘラバヒメジョオンは年2回の刈り取り処理で、メマツヨイグサは年1回の刈り取りで十分な抑制効果があった。抜き取り処理においては、ヘラバヒメジョオンは年1回の刈り取りで抑制効果はあったが、処理の時季が異なるため、刈り取り処理と比較するには、検討の必要があった。メマツヨイグサでは一定の抜き取りの効果があると考えられた。発表ではさらに、播種の結果と刈り取り等の処理が群落構造に与えた影響等を報告する。