| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-346J (Poster presentation)
多くの人が利用する国立公園の課題として、植生破壊、土壌改変、外来種の侵入、病原菌の拡大などが報告されている。施設整備に伴う土砂の搬入や周辺環境の改変は国立公園における外来種の侵入の大きな要因として知られている。一方、様々な人と物資の移動を伴う国立公園の観光利用は、外来種を侵入させるリスクを高める可能性があるものの、ほとんど検討が行われていない。
アメリカクサノボタン(Clidemia hirta(L.)D.Don)は、中米原産の低木で、IUCN世界の外来種ワースト100に指定されている。近年、熱帯地域への侵入が問題視されている。原産地では好光環境下に生息し暗い林床には侵入しないが、原産地以外では林床にも侵入する。
半島マレーシアでは既にC.hirtaの侵入が確認されており、南部に位置するエンダウロンピン国立公園(ERNP)でも今回の予備調査でC.hirtaの生息を確認した。そこで、本研究では、公園内のC.hirtaの分布パターンと観光利用の関係性について検討した。2011年9月に公園内の沿路において、GPSを用いたC.hirtaが生息している地理的地点を測位し、その光環境を目視にて2段階評に評価した。
その結果、車が利用できる道路では高密度に分布し、人が歩くための観光用の沿路では低密度に散らばって分布していることが分かった。前者では、公園造成前に林業用路として造成された形跡があり、この箇所での侵入はその時の車の進入によって起こった可能性が大きいと考えられる。後者は、林業用路に生息していた個体が何らかの要因によって分散された可能性があり、その要因として観光利用の影響の可能性が考えられうる。ポスターでは、観光利用の形態や頻度の異なる場所における分布パターンを比較し、その関係性について議論する。