| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-349J (Poster presentation)
全国の河川では氾濫原の樹林化が進むとともにニセアカシアの侵入が顕著となってきている。要因として河川の撹乱体制の変化が挙げられ、各種の人工構造物は増水時の砂礫河原を攪乱する外力を減少させ河床低下・砂州の安定化を引き起こし、耐乾性が強いニセアカシアの分布に寄与すると言われている。しかし、このような報告は多雨地帯で急峻な河川が多い北陸地方では少ない。そこで、本研究では撹乱体制の変化が砂礫原に発達する河畔林組成,特にニセアカシアの侵入と更新に与える影響を評価する事を目的とした。調査地は石川県を流れる手取川(流域面積892km2、幹川流路延長72km)の扇状地氾濫原地帯とした。この地帯は1980年上流部に多目的ダムが建設された事から、洪水撹乱頻度低下の影響を受け、河床低下や河道の樹林化が顕著となっている。調査方法としては文献調査・空中写真判読・現地調査を行い、2年代(1992年、2011年)の植生分布図を作成した後、種組成のタイプ分けやタイプごとの面積を比較した。また、現地調査(2011年)ではタイプ分けされた群落において、樹種・胸高直径・樹高・樹齢・下層植生の測定を行うとともに、Lidarデータによる詳細な河川地形の解析と底質を採集分析し、立地環境要因の解析を行った。
2時期に出現した河畔林群落は、ヤナギ属群落・アキグミ群落・オニグルミ群落・ニセアカシア群落に区分する事ができた。その中で最も面積変化が大きかったのは、ニセアカシア群落で1992年と比較して2011年には約12倍群落面積が増大していた。1992年は扇状地上流域にしか見られなかったが、2011年には中・下流域で確認され、樹齢構成も若齢林(樹齢10年以下)が多く、近年急速に分布を拡大していることが確認された。本発表では、著しい分布域の拡大がみられたニセアカシアの立地環境を解析するとともに、河川環境変化との関係について考察を行う。