| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-356J (Poster presentation)
里山林は多様な野生生物の生息場所として注目されているが、近年、外来生物の侵入が生物多様性保全の観点から懸念されている。本研究では、林内環境と外来生物の侵入状況の関係を明らかにするために、管理状況が明らかな大阪府内の6カ所の里山林(St.1~6)を選び、2010年の春、夏、秋に各1回、計3回ずつルートセンサス調査を行った。調査にあたっては、設定ルートを植生環境の違いにより草地環境、明るい林内環境、暗い林内環境の区間に分け、ルート沿いに見られた動植物を記録した。
調査の結果、昆虫類ではSt.3,4でアオマツムシを、鳥類ではSt.1でソウシチョウを、哺乳類ではSt.1でタイワンリスを、それぞれ確認した。草本植物では、6科14種の要注意外来生物、と10科22種の帰化植物が記録された(以下、外来植物)。そのうち、ダンドボロギクなどの3種が4カ所の里山林の草地環境または明るい林内環境でよく確認された。一方、メリケンカルカヤは、出現頻度(全38区間に占める出現区間の割合)が高く(0.37)、暗い林内環境でも記録された。全調査地の平均NA比(外来種数/在来種数)は、草地環境がもっとも高く(0.39)、暗い林内環境(0.27)、明るい林内環境(0.20)であった。しかし、St.3以外では、NA比は草地環境で高く、明るい林内環境、暗い林内環境の順であった。また、St.3,4,6では、すべての植生環境で、NA比はそれぞれの平均値以上の値を示した。
以上のように、大阪府内の里山林では、特定外来生物を含む外来動植物39種の侵入が確認され、St.3,4,6の草地環境では特に多くの外来植物が確認された。これは里山林の利用頻度が高く、在来種と外来種を区別せず機械による草刈が行われているためと考えられる。また、St.3でのみ暗い林内でNA比が高かったが、これは上記に加えて、イノシシによる掘り返しが多いことによる影響が考えられる。