| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-357J (Poster presentation)

スクミリンゴガイの琵琶湖およびその集水域における侵入・定着

*嶺田拓也(農工研), 金尾滋史, 中井克樹, 松田征也(琵琶湖博), 高倉猛(滋賀県自然環境保全課), 林和典((株)パスコ), 日鷹一雅(愛媛大)

スクミリンゴガイPomacea canaliculata(一部はラプラタリンゴガイP. insularum、通称「ジャンボタニシ」)は、西日本を中心に分布を拡大している南米原産の外来種で、水田地帯における害虫として、また生物多様性を減退させる生態系撹乱種として、侵入生物問題を引き起こしており、直種栽培普及による省力化の大きな支障となっている地域もある。

滋賀県では1986年に県南部の野洲市を流れる家棟川流域において確認されたものが最初の記録である。これは川沿いにあった本種の養殖場から投棄されたものが野生化したことが起源であると考えられており、本河川および流域中の水田地帯に広く定着するようになった。その後、一時的に卵塊や死殻が確認されることはあったが、しばらくの間、滋賀県内では家棟川流域以外で本種が確認されることはなかった。しかし、2005年に県東部の彦根市内にある内湖およびその流入河川において本種の定着が確認された。その侵入過程は不明ではあるが、周囲の聞き取り調査などから本種がこの地域に出現したのは2000年以降であると考えられた。このうち、流入河川においては調査時や住民参加による一定の努力量の駆除によって、本種の生息個体数は激減したが、駆除が困難な内湖では増加している。また2006年以降は琵琶湖南湖の西部に位置する堅田漁港においても本種が確認されるようになり、琵琶湖沿岸に本種が進出するようになった。その後の調査により、南湖の湖岸沿いに生息域が拡大しつつあることが判明し、単に農業被害のみならず、沿岸域の生物多様性に与える影響も危惧される状況となっている。

今回は、生物多様性のホットスポットでもある琵琶湖およびその流域において本種の分布拡大状況を紹介し、現在の対策と今後の課題について報告する。


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