| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-359J (Poster presentation)
前大会で,鎌倉市神戸川に生息するカワニナ属とコモチカワツボは,付着物を主食とする食性があることを報告した。
本発表では,外来種コモチカワツボ(Potamopyrgus antipodarum) と在来カワニナの一種(Semisulcospira sp)の両種が,付着物中の何を主食としているかを発表する。また,同所的に生息する両種が,餌資源をめぐって生物間相互作用があるかを推測した。
それら巻貝の食性の推定に窒素・炭素安定同位体比を計測した。安定同位体比は上流部に生息するカワニナ属の窒素では低く,炭素では高い。一方で,上流部コモチカワツボの窒素では高く,炭素では低い。下流部のカワニナ属とコモチカワツボの窒素では高く,炭素では低く,両種の安定同位体比に差はなかった(カワニナ属・コモチカワツボ:δ13C=-26.5~-27.1‰,δ15N=8.3~10.2‰)。また,川底の礫上の付着物は,上流部と下流部で炭素・窒素ともに異なった。下流部の川底の礫に流下したたくさんの落葉の窒素・炭素安定同位体比は,下流部のカワニナ属とコモチカワツボが食べていると考えられる値を示した。そして,コドラート法で計測した生息密度調査では,上流部に緑地がある調査地点で,多くのカワニナ属の生育が確認できた(27.6個/25cm2)。
これらのことから,両種の巻貝は付着物中の風化した落葉を食べていると推測され,餌資源をめぐる競合をしていると考えた。付着物や落葉を摂食しているかを明確にするために,飼育実験から得られたカワニナ属とコモチカワツボの同位体濃縮係数を含めて,巻貝の食性と資源消費型競争の可能性を発表する。