| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-038J (Poster presentation)
モンゴルの年間降水量は平均270mmほどで国土の8割が草原に覆われている。南部にはゴビ砂漠が広がり,黄砂の主要な発生源の一つとされている。砂漠や乾燥地では植栽による緑化を行い,砂漠化の進行を食い止める活動や研究が行われている。植被は黄砂の抑制につながるが,植物個体内のバイオマス分配が植被量をつうじて黄砂抑制に影響することが考えられる。そこで本研究では,モンゴル草原に広範囲に優占するユリ科ネギ(Allium)属植物を調査し,降水量の傾度と地上部/地下部の発達状況がどのように変化するかを調査した。
モンゴル草原では6-8月にかけて月間降水量が50mmを越え, 8月下旬に植被量が最大になる。この時期に調査を行った。調査はウランバートルから南東側ザミンウッド間を移動しながら実地し,市街地から遠く,家畜の影響が少ない草原に計21の調査地点を設定した。各調査地点ではネギ属植物が生育する典型的な場所を選び, 100cm×100cmのプロットを設置した。プロット内でネギ属植物の個体数を記録し,表層の土壌水分量および土壌硬度を測定した。出現種を同定し,種ごとに5個体を採取した。採集した植物体は生重量の測定を行った後に自然乾燥した。その後植物体ごとに地上部,地下部,鱗茎部,鱗茎周辺部に分類し,機械乾燥ののちに乾燥重量を測定した。
21地点で計6種のネギ属が出現した。このうちA.polyrhizumとA.mongolicumがそれぞれ10地点ともっとも広範囲に出現した。乾燥が進むにつれて同属内では地下部への投資が増加するのではないかと考えたが,両種とも個体生重量のばらつきが大きかった。ただし乾燥の激しい地点では地下部重量が大きい傾向があった。それぞれの部位に含まれる窒素量の測定を行い,ネギ属植物の地下部投資の可塑性について検討する。