| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-041J (Poster presentation)
人工衛星を用いて全球の総生産量の推定をしたMODISのプロダクトでは、植生指標を介して求めた葉の光の吸収量、光利用効率とストレス関数を乗じる方法が使われている。水ストレスについては飽差を変数とした関数が使用されており、気孔開閉といった植物の生理的応答を導入しているわけではない。そこで、本研究では、リモートセンシング技術で気孔開度を測定し、衛星による総生産量推定の精度向上に向けて、基礎実験を行った。
2011年8月から9月にかけて、岐阜大学高山試験地においてミズナラ(Quercus crispula)とダケカンバ(Betula ermanii)、森林総合研究所山城試験地においてコナラ(Quercus serrata)を対象として、樹冠と個葉を熱赤外カメラで測定すると共に、個葉ガス交換速度を測定した。個葉の熱赤外画像による葉温とLI6400で測定した葉温の日変化を比較すると、全ての樹種で、赤外画像による葉温の方が日変化の変動が大きくなった。さらに、曇天であった高山試験地での観測では、個葉の熱赤外画像による葉温の日変化は気孔コンダクタンスと同じような変化を示したが、晴天であった山城試験地では、日射と同じパターンを示した。また、この葉温の観測結果から気孔開度を推定するためのアプローチとして、光合成と熱収支を統合したモデル(Baldocchi 1994、Harley et al. 1995)を基にして、気孔コンダクタンスの推定を試みた。本発表では、このモデルから推定された気孔コンダクタンスの妥当性についても検討する。