| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-042J (Poster presentation)
ボルネオ熱帯雨林は世界で最も湿潤な生物圏の一つであるが、突発的な水ストレスを経験することもある。これまでの観測から、この生態系は、そのような突発的な強度の土壌乾燥があるにも関わらず、ほとんど水利用調節を行っていないことがわかっている。このような水利用様式は、しばしば“Anisohydric”と呼ばれ、植物体内の通水阻害を防ぐために気孔制御を積極的に行う“Isohydric”と対照的である。“Anisohydric”とは、一般には乾燥環境下への適応であると考えられているが、本研究では、私達は、通水阻害の危険性がほとんど無い非常に湿潤な環境では“Anisohydric”は“Isohydric”よりも得をする事が多いということを示すこととした。そのために、現地観測でパラメタライズされた土壌水分と炭素同化ダイナミクスの確率過程モデルを利用して、水文気象要因の関数として“Anisohydric”と“Isohydric”のそれぞれの長所を調べた。その結果、非常に湿潤な環境下では、どちらの種類も同じレベルで乾燥枯死に至る可能性を持ちながら、“Anisohydric”は“Isohydric”よりも高い生産性を持つ傾向があることが示された。降水量が減少するにつれて、“Anisohydric”の枯死率は急速に増加するが、“Isohydric”の枯死率は低値で一定であった。また、その時、“Isohydric”は生産性においても“Anisohydric”を凌駕した。