| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-046J (Poster presentation)
落葉樹の個葉の性質(窒素量、葉面積あたりの乾燥重量、光合成活性など)が生育環境によってどのように変わるのか、また葉の老化や葉寿命と個体成長などとの間に関連があるのかについて調べる目的で実験を行なった。先駆樹種であり、春葉展開後、春葉の稼ぎに依存して夏葉を展開する順次展葉型の落葉樹ダケカンバを実験材料として選んだ。サイズの小さい個体では生育環境の影響が表れやすいのではないかと考え、高さ約30cmの苗木を用いた。環境制御下で苗木をポット栽培し、弱光、栄養欠乏、水欠乏という環境ストレスを与えた。昨年度の実験では、春葉の展開まではこれらの生育条件と対照条件との間に個体あたりの葉枚数に大きな差は見られなかったが、栄養欠乏では夏葉の展開数が少なく、落葉がより進行する傾向が見られた。水欠乏では対照と比べ、個体あたりの葉枚数が若干少なくなる傾向が見られた。このような生育環境間の展葉・落葉の違いは個体の成長量に影響を与えた。昨年度は弱光の影響が出にくかったこと、水欠乏では対照と比べて栄養供給量も半分になってしまったことから、今年度は昨年度より生育光を強く、かつ被陰の程度も大きくし、対照と弱光の生育光量の差を大きくした。また、水欠乏と対照とで栄養供給量が等しくなるようにした。今年度は展葉・落葉を葉を区別して調査した。個葉の性質や個体成長は生育条件に応じて変化した。弱光では対照と比べて春葉の光合成活性の低下の進行が遅くなる傾向が見られた。しかし、葉寿命には同じ生育条件内でも、個体差や個体内の枝間でのばらつきがあり、生育条件間での明確な差異は見られなかった。葉寿命とその葉がついている枝の展葉数との間にも明確な関係は得られなかった。