| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-056J (Poster presentation)

木本植物の硝酸還元に伴う根呼吸の定量、14CO2パルスラベリングを用いて

*日高渉(京大・農), 徳地直子(京大・フィールド研), 藤井一至(森林総研), 小山里奈(京大・院・情報), 長田典之(京大・フィールド研), 藤巻玲路(島根大・生物資源)

植物は窒素を主に土壌中からNH4+あるいはNO3-の形で吸収し同化する。特にNO3-利用の場合には、NO3-をNH4+へと還元する過程を含んでいるため、NH4+利用に比べて余計にエネルギーを必要とする。NO3-還元は根と葉で行われるが、根でのNO3-還元は根呼吸によって還元エネルギーを得ており、炭素コストを伴う。今日の窒素降下物の増加に対する森林植生の応答を評価するためには、窒素条件の違いが植物の炭素コストへ与える影響について調べる必要がある。

植物のNO3-・NH4+の吸収割合やNO3-を還元する場としての根と葉の比重などは植物種・光条件によって異なることが知られているが、特に、木本植物についての情報は非常に限られている。そこで、本研究では我が国に広く分布するアラカシを対象とし、窒素・光条件の根呼吸量つまり炭素コストへの影響を解明することを目的とした。

アラカシを3ヶ月間ポット栽培し、葉・根の硝酸還元酵素活性(NRA)を明条件・暗条件下で測定した。また、ポットの施肥窒素条件としてNO3-のみ・NH4+のみ・窒素源なしの異なる3条件における根呼吸量を放射性炭素14Cパルス・ラベリング法によって定量し、窒素利用形態の違いが根呼吸活性(根重量・14CO2吸収量当たりの14CO2放出量)に及ぼす影響を評価した。

この結果、葉・根の両方でNRAが確認され、明条件では葉のNRAが上昇し、暗条件では根のNRAが上昇することが確認された。一方、根呼吸測定実験では、根からの14CO2放出量はNO3-施用条件で他の2条件よりも高く、根呼吸活性が根における硝酸還元によって増加したことが確認された。以上から、根に硝酸還元酵素を有するアラカシを用いて、木本植物で初めて硝酸還元に伴う根呼吸の定量に成功した。


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