| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-057J (Poster presentation)
気孔は青色光にさらされた場合や、飽和水蒸気圧差(VPD)が小さい場合、葉内二酸化炭素濃度(Ci)が低い場合に開く。このような外部環境に対する気孔応答を定量的に扱うための気孔コンダクタンス(g)モデルとして、Ball-Berry(1987)やLeuning(1995)の半経験的モデルがある。これらは、変数として光合成炭素同化速度(An)を用いているものの、Anがgに作用するメカニズムはおろか、実際に作用するかどうかさえも結論が出ていない。例えば、両者の関係を否定する立場としては、遺伝子組み換えによってAnを低下させたantisense植物でも、気孔応答は野生型と変わらないという研究がある(von Caemmerer et al. 2004)。一方、Anのgに対する関与を示唆する立場としては、葉肉組織から剥がした剥離表皮では、気孔の応答が確認できないが、剥離表皮を葉肉上に置くと応答が見られるようになることを示した研究がある(Mott et al. 2008)。
そこで、Anとgの関係を明らかにするため、私達はタバコ(Nicotiana tabacum)を材料として、両者の直接的な関係を調べることにした。その方法は、気孔の開閉制御に影響を与える光強度、VPDとCiを一定に保ちながら、大気中の酸素濃度を変えることでAnを変化させる、というものである。Ciを150 ppmに固定し、酸素濃度が2%, 10%, 20%, 30%, 40%の場合のAnとgを測定した。酸素濃度の増加と共にAnは減少したけれども、gにはそのような減少は見られず、Anとgの間には統計的に有意な関係はなかった。すなわち、Anがgを制御するわけではないことが示唆された。一方、Anに代わってgとの間に統計的に有意な相関が確認されたのは、光合成電子伝達速度であった。ただし、様々なCi条件下のデータをプールすると、gと光合成電子伝達速度の間に有意な相関は見られなかった。