| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-064J (Poster presentation)

暖温帯二次林におけるアラカシとコナラの個体レベルの窒素動態

*牧野奏佳香(京大・農),長田典之(京大・フィールド研),徳地直子(京大・フィールド研)

植物にとって窒素は光合成タンパク質として不可欠な元素であり、窒素含量(面積あたり)が多い葉ほど光合成能力が高い傾向がある。草本では個体内の窒素分配について数多く研究が行われてきたが、構造が複雑な高木の樹冠内において個葉の窒素含量がどのように調節されているのかは不明である。そこで本研究では、京都大学上賀茂試験地において、常緑樹アラカシと落葉樹コナラの高木を対象として樹冠内窒素動態を調査した。

2011年4月から12月にかけて様々な高さのシュートを対象として毎月着葉枚数を調べ、夏にそのシュートの葉の光環境を測定した。さらに、様々な高さから毎月ランダムに二年枝ユニットを採取し、各齢の枝、葉の窒素含量を調べた。

2種とも高い位置の葉ほど指数関数的に光強度が上昇した。ただしアラカシの一年葉、二年葉では当年葉ほど上昇しなかった。

アラカシの葉の窒素含量は当年葉、一年葉では高さとともに増加したが、二年葉ではこの増加は緩やかであった。これは二年葉が当年葉、一年葉の被陰下にあるためと思われる。また4月の展葉に同調して落葉する以外は着葉枚数に大きな変化は見られなかった。

コナラの葉の窒素含量は高さとともに増加した。また、窒素含量は春の展葉と共に増加して夏にピークに達し、落葉期には減少した。着葉枚数は夏の台風によって大幅に減少した。

以上から、アラカシに比べてコナラでは夏における個体の窒素損失量が多いと考えられた。これらの葉の窒素含量の結果に加えて、幹、枝の窒素含量の季節変化を考慮してアラカシとコナラの個体レベルの窒素動態の違いについて議論する。


日本生態学会