| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-084J (Poster presentation)
雌雄異株植物における開花フェノロジーの性差を扱った研究は少なく、中でも開花フェノロジーの資源状態への反応について、その性差をみたものは少ない。開花フェノロジーの性差は、雄と雌の持つ花数の違いにより生じると考えられている。花数が圧倒的に多い雄は、少量の花を少しずつ咲かせるのが適応的であるのに対し、花数の少ない雌は、持っている花数の大半を一斉に咲かせるのが適応的である。
本研究では、同所的に生育しているモチノキ科モチノキ属の3種、ソヨゴ、イヌツゲ、ウメモドキの雌雄各10個体を対象に、個花の寿命とともに開花フェノロジー(開花開始、開花日数、最大開花率)の性差を確認し、同性内においても花数によって開花フェノロジーが変化するかを検証した。開花フェノロジーの資源状態への反応の性差は、資源状態によって花数が変わるか、花数が変わると開花フェノロジーが変わるか、という二段階の解析によって明らかにした。資源状態の指標としては、シュート、そのシュートが属する萌芽枝、その個体という3カ所の大きさによって評価し、花数に対してどの単位で稼いだ資源が影響しているのかも解析した。
3種とも開花フェノロジーには性差があり、雌が寿命の長い花を一度に咲かせるのに対し、雄は短命の花を次々と咲かせながら少量の花数を維持することがわかった。開花開始と開花日数は、種によって性差があるものとないものがあった。開花フェノロジーの資源状態への反応は、イヌツゲの場合、雌雄共に資源が増えると花数が増える傾向がみられ、花数が増えた場合の開花フェノロジーの反応も、最大開花率は下がるが開花日数と開花開始への影響は少ないという同様の変化であったため、資源状態による反応に性差はないことがわかった。花数に影響する資源がどの単位で稼がれた資源であるかは、雌雄、種によって違いがあった。ウメモドキとソヨゴの結果と共に、種間の比較を含めて考察する。