| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-089J (Poster presentation)
ケヤキの結果枝は枝ごと落下して散布体になることが知られている。しかし、全ての種子が結果枝についたまま落下するわけではなく、結果枝が落下する前に単体で落下する単体落下種子も存在する。一種の植物が2タイプの種子をつけることは種子二型として草本でよく知られていて、この場合、散布距離が短いもので休眠性が高くなる例や、散布距離と自殖率において関係が見られることなどが報告されている。これらは適応度を最大にするための戦略として説明されている。しかし、木本においては種子二型の報告は少ない。今回の研究ではケヤキの結果枝種子と単体落下種子が種子二型ではないかと考え、それぞれの種子の特徴を調査した。
主な調査項目は散布距離、無風時の落下速度、休眠性、自殖率である。散布距離に関しては距離別にシードトラップを設置して調査を行った。結果、親木から5mの場所では8割程度が単体落下種子なのに対し、20mと30mでは7割から8割程度が結果枝種子で、結果枝種子のほうがより遠くへ散布されることが確認された。また、落下速度も単体落下種子が4.60m/sで結果枝種子が1.62m/sと結果枝種子のほうが遅かった。自殖率はSSRをマーカーとして用いて親木と種子を調べ、自殖種子かどうかを判断して単体落下種子と結果枝種子で比較する。また、それぞれの種子で、実験室内でのR:FR比や変温条件を変えた実験を行い、休眠性や発芽特性を調査する。発表では休眠性や自殖率の結果もふまえ、それぞれの種子の役割や、木本の種子二型の適応戦略について考察する。