| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-095J (Poster presentation)

キク科雑草における痩果形態と種子散布様式の関係

*西尾孝佳,新濱美穂,舩生真那(宇都宮大・雑草セ)

侵略的な種を最も多く含む分類群の1つであるキク科植物には,冠毛やかぎ状突起を形成するなど,種子の長距離散布を促進すると考えられる様々な瘦果形態が存在する。しかしながら,瘦果形態と種子散布様式の関係は冠毛があれば風散布,かぎ状突起があれば動物散布などと分類されるのみで,各瘦果形態が他の散布媒介にも依存できる可能性については十分に議論されていない。そこで本研究では,風,水,動物(付着)といった散布媒介因子に対して,移動能力を促進する瘦果の形態的特性を定量化し, キク科雑草が持つ散布能力の潜在性を解析することを目的とした。解析の対象は宇都宮市近郊に分布するキク科雑草で,在来種13種,非在来種18種の合計31種とした。各種の瘦果は野外で自生する個体から採取し,風散布,水散布,動物(付着)散布を想定した操作実験と形態の計測を行った。風散布は,空気の攪乱が少ない室内において,各種20粒を5回ずつ2mの高さから落下させ,落下時間と移動距離を計測した。水散布では,300mL の水道水を入れた瓶に各種50粒を浮かべて一定温度で保管し,瘦果が水中に沈むまでの時間を計測した。動物散布では,平滑な面に水滴が付いた場合(長靴やタイヤなど)と,繊維の場合(動物の毛,衣服など)を想定し,前者は付着継続時間を,後者は異なる材質での付着の可否を計測した。一方,瘦果形態は,重量と付属構造以外の長さ及び幅を測定し,冠毛のある瘦果では,半径,嘴長などを,かぎ状突起のある瘦果では突起の長さなどをデジタル画像より計測した。その結果,(1)散布と瘦果形態の関係は分類群で異なる,(2)水散布は冠毛の面積,有無,離脱性と瘦果重の関係に依存する,(3)冠毛は付着性に影響する,などが示唆された。


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