| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-105J (Poster presentation)
多雪地域の針葉樹人工林における下層植生の維持管理と針広混交林化の基礎データを収集することを目的に,岐阜県郡上市大和町内ヶ谷(標高800m,最深積雪2m)にある壮齢スギ人工林(42年生)の,間伐や冠雪害により形成された林冠ギャップにおける下層植生の種組成と植被率の変化を7年間(間伐前1年間,間伐後6年間)にわたって調査した。
間伐と冠雪害によるスギの本数減少率は間伐区で56%,対照区(間伐を行わなかった区)で3%(冠雪害による)で,調査区内の相対日射量は両調査区で大きくなった。相対日射量には,同じ調査区内でも測定地点によりばらつきがみられた。
調査区内に設置した各5箇所のコドラート(1m×1m,一部において2m×2m)において,草本層(H≦0.3m),低木層(H>0.3m)に区分した下層植生の変化をみると,全植被率は林冠が疎開した後,数年間にわたり両調査区内のどちらの層においても増加傾向にあった。その原因は,草本層においては,林冠疎開後に急激に林床を被覆したつる性植物(フユイチゴ,ツルアジサイなど)やシダ植物(リョウメンシダなど)の,低木層においては低木性木本(シロモジなど)の被度の増加によるものであった。高木性樹種(ミズメ,ホオノキ,ミズナラなど)がみられたコドラートは7箇所あったが,これらのうち最終調査時まで生残した個体はわずかであった。将来,混交林化に寄与することが期待される樹種の定着はほとんどみられなかった。
間伐後6年が経過し林冠の閉鎖が進んだことにより,両調査区の相対日射量は低下傾向にある。加えて低木層の植被率が高くなったことによって,草本層における光環境はさらに悪化している。その結果,つる性植物の被度が低下し草本層が衰退をはじめている。人工林下で継続的に下層植生を維持管理するためには,林床における光環境の確保が必要であり,そのために効果的な伐採率や間伐間隔についても検討する必要がある。