| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-106J (Poster presentation)

島根県の二次林における高木・亜高木種5種の萌芽の形態と生態学的意味

*吉田幸弘(京都大・農),北山兼弘(京都大・農),福島万紀(島根・中山間研セ)

萌芽枝は樹木の主幹が損傷した際に親株から発生する枝であり、萌芽枝による世代交代は萌芽更新と呼ばれる。萌芽更新は特に二次遷移の更新戦略において重要であり、萌芽発生率は遷移後期的な種ほど高いことが知られている。また萌芽枝の初期生長は親株から供給される資源に制限される。この資源制約内でどのような形態の萌芽枝を作るかは、萌芽枝の成長速度や競争力を左右するため生活史戦略として重要である。しかし、萌芽枝における投資配分-形態の関係の種間差についての知見は少ない。そこで本研究は、萌芽更新において投資配分-形態にどのような種間差があるのかを明らかにすることを目的とした。

調査は、皆伐から1成長期経過した島根県浜田市弥栄町の二次林で、2010年9月から11月に行った。コシアブラ・コナラ・リョウブ・ソヨゴ・ウラジロガシの切株から発生した萌芽枝を対象とした。萌芽枝の本数・長さ・絶乾重量及び、萌芽枝の葉の枚数・面積・絶乾重量を測定した。以上の測定項目から、萌芽枝の形態と投資配分の関係を考察した。

親株の周囲長当たりの萌芽枝本数は、コシアブラ・コナラ・リョウブ・ソヨゴ・ウラジロガシの順に大きくなり、萌芽枝1本当たりの資源量と負の相関が見られた。また、この樹種の並びは遷移系列に沿った可能性が示唆された。さらに、萌芽枝本数が少ない樹種は、1本当たりに資源を多く配分することでサイズの大きな萌芽枝を作り、一方で萌芽枝本数の多い樹種は、1本当たりに配分される少ない資源をより枝に投資することで高さ成長優先型の萌芽枝を作ることが分かった。樹種により萌芽枝の投資配分や形態は異なるが、最終的な便益として高さを稼ぐ形質を持つことから、多くの種にとって萌芽枝は競争に勝つために高さ成長を稼ぐ重要な手段である可能性が示唆された。


日本生態学会