| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-108J (Poster presentation)

高槻市本山寺の森(暖温帯針広混交林)における32年間の植生変化

*松井淳, 福岡泰友(奈教大・生物), 今村彰生, 佐久間大輔(大阪自然史博), 常俊容子(大阪自然環境保全協会)

高槻市の本山寺裏山北斜面(34°55’N,135°37’E,標高500 m)には、ツガの大径木を交えアカガシが優占する針広混交林がある。この林分は1978年に大阪府の自然環境保全地域特別地区に指定された14.32 haの一部にあたり、その選定理由にあるように、暖温帯と冷温帯の中間的な植生を有し大阪府域を代表する貴重な存在である。

しかし本地域でも近年シカ個体群の増加は著しく、たとえば川道ほか(2007)によれば、高槻地区の2キロメッシュ29区画のうち1982年にシカの分布が確認されたのは5区画のみだったが2006年には28区画に上っており、シカによる植生への影響が懸念されている。

この森林の現況、変化とシカによる影響を明らかにし保全に資することを目的として、私たちは2010年9月、堀田満氏らが1978年に調査した(高槻市1979)約4haの中央部に1haの調査区を設定し、胸高直径5cm以上の木本の種名、位置、胸高周囲長、剥皮の有無を記録した。両調査で得られた樹木位置図を照合することで32年前当時に今回の調査区内に生育していた個体を推定し、種ごとの幹数や胸高直径の変化を検討した。

2010年には46種1635本の木本が出現し、1978年(50種1343本)比で22%増加した。優占種はツガ、ヒノキ、アカガシのほかヤブツバキ、ヒサカキなどの常緑広葉樹が多かったのに対し、1978年は上位3種のほかにリョウブ、クマノミズキなどの落葉広葉樹が多かった。剥皮率はリョウブ60%とヤブツバキ49%が高かった。胸高断面積は69%増加した。この間の植生変化の要点は現存量の増加、落葉樹の減少と常緑樹の増加であり、シカの影響と捉えられる面もあるが林分の発達と遷移の進行という説明も可能であった。


日本生態学会