| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-313J (Poster presentation)
三宅島では、2000年噴火により大量の火山灰が堆積し、山頂部から中腹にかけて裸地化した地域が出現した。このような場所は植生-土壌系の初期発達過程を扱った研究を可能にする。本研究では、火山灰堆積地上での炭素集積速度を明らかにすると同時に、リターの蓄積量および分解速度を把握することを目的とした。
島西部の中腹(379-544m)に2007年に設置した3つの固定調査区(10×10m)を対象として、2008年および2011年に調査を行った。これらの調査区は火山灰堆積(20-52cm)によりほぼ裸地化した地域にあり、標高に沿った植生の発達傾度の違いがみられる。
噴火後11年経過時点での各調査区における地上部炭素量はそれぞれ、63g/m2、2765g/m2、3694g/m2であり、そのうちの90.2%、88.8%、77.7%をハチジョウススキが占めていた。
また、標高の低い調査区2地点において、3年間で現存量の有意な増加がみられたのに対し、リター蓄積量に有意差はみられなかった。一方で、各調査地点においてリターの分解速度は、植生の発達した地点ほど速くなる傾向がみられた。以上の結果から、植生の発達に伴って分解系が発達し、リター蓄積量の増加が抑制されると考えられた。
2008‐2011の3年間において、各調査地点とも地上部への炭素集積速度が土壌部を上回っていた。これは、遷移初期の炭素蓄積は土壌に対して植生が先行することを示している。