| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T05-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

異なる森林生態系における種多様性損失と機能的多様性の変化

*黒川紘子, 饗庭正寛, 片渕正紀, 柴田嶺, 石田敏, Lamthai Asanok, 佐々木雄大, 中静透(東北大・院・生命)

前例のない速度で進んでいるとされる生物多様性の損失をうけ、生態系機能における種多様性損失の影響を定量的に評価しようとする研究が数多く行われてきた。しかし、多くの研究はランダムな絶滅を仮定しており、実際の種多様性損失の要因を考慮していない。生態系機能における種多様性損失の影響を定量的に評価・予測するには、ある撹乱に対してどのような機能的多様性が変化しやすいのか、そして機能的多様性の変化に種多様性がどのように貢献するのか、などを明らかにする必要がある。

世界的には、土地利用パタンの変化が多様性損失の最も大きな要因とされている。そこで本研究では、温帯や熱帯といった異なる森林生態系において、伐採や焼き畑、火事などの人為撹乱にともなう種多様性の変化が、群集の機能的多様性にどのように影響するのかを検討する。調査はタイ、マレーシア、日本の原生林(もしくはそれに近い林)とその周辺の二次林で行った。一般に植物の生長に関わるとされるLMA(葉重/葉面積)、材密度、葉の強度、個葉面積、窒素濃度や、被食防衛に関わるとされるフェノール・タンニン濃度、そして落葉分解に関わるとされるリグニン濃度、などの機能形質を用い、1)各機能形質の撹乱に対する応答性、2)撹乱に対して応答しやすい形質と生態系機能に影響を及ぼす形質との関係、3)機能的多様性の変化に対する種プールの多様性の影響、などを解析する。予備的な解析の結果、形質によって種多様性と機能的多様性の関係は異なること、種多様性損失に伴う形質の平均値やレンジの変化は生態系(種プールの多様性の違い)によって異なることが予測された。このような結果から、生態系機能やその安定性における種多様性の効果を考察したい。


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