| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
企画集会 T07-1 (Lecture in Symposium/Workshop)
琵琶湖沿岸域の湿地植生については,佐々木(1995)が広く湖岸植生を含め報告している.演者らは 2007~2011年に新たに植物社会学的な植生調査を実施し,コウキクサクラス,ヒルムシロクラス,タウコギクラス,ヨシクラスを対象に群落区分を行った結果,10群集,63群落,計73の植生単位を抽出した.これらには単層群落で優占種が同時に表徴種・区分種となる植生単位が多く含まれる.しかし,大型スゲオーダーについては優占種以外に区分種を持つ植生単位が認められた.琵琶湖湖岸湿地の群落タイプについて以下の知見が得られた.
1.カサスゲ群集Caricetum dispalatae は,下位単位にシロバナサクラタデ亜群集,ハンゲショウ亜群集,典型亜群集が認められた.これは演者らが報告(西川・村上・濱端 2008)した琵琶湖沿岸の内湖(近江八幡市西の湖)のカサスゲ群集の下位単位群落と類似しており,両者はヨシ刈りにより維持される半人工草原に位置づけられる.本群集は,琵琶湖北部の西岸と西の湖のヨシ原を中心に広く分布している.ただし,ヨシ原は自然植生域においてはこうした大型スゲ類を欠く事が多い.
2.オニナルコスゲ群落は,北半球に広く分布する大型のスゲ群落で,日本ではオオバセンキュウ-オニナルコスゲ群集Angelico genuflexae-Caricetumvesicariae Miyawaki et Fujiwara 1970が記載されている.琵琶湖周辺においては,オオバセンキュウが分布しないため本群集への帰属は留保された.欧州ではオニナルコスゲを標徴種とするオニナルコスゲ群集Caricetum vesicariae Br.-Bl. et Denis 1926が記載されており,本群落の帰属が検討される.
3.ウキヤガラ-マコモ群集は,琵琶湖湖岸の自然植生域では,マコモの単一群落が多い.ウキヤガラとマコモが混生する植分は人為的影響を受けた二次植生域に集中していた.