| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
企画集会 T11-2 (Lecture in Symposium/Workshop)
日本の昭和基地のある宗谷海岸には、最終氷期後に氷床が後退した後に露出した露岩に域に多数の氷河湖が形成されている。これら湖の成立年代、成立後におかれた気候はほぼ同じものと考えられるが、湖沼中に発達・繁茂している湖底藻類群集は、湖の独立した生態系の性質ゆえか、多様な姿かたちを見せている。藻類群集は湖底に到達する光エネルギーを制御・利用しながら現在の姿を形成してきたものととらえ、本講演では、南極の地表に到達する光、それぞれの湖底に到達する光、群集内を透過する光の多様性についての観測・解析結果を紹介する。
光波長別の地表到達エネルギー量は季節的な変動よりもむしろ天候による変動が顕著で、晴天時、約5%が紫外線で、曇天時にはそれが7~10%に及ぶという観測結果であった。およそ20km2の広がりを持つ露岩にある20の湖沼で水中に入射する光スペクトル測定を行ったところ、紫外や可視長波長の消散係数が大きいという水圏での一般的傾向もあるものの、湖によっては紫外をかなり透過させやすい水をたたえたものも多数あり、またその係数自身には湖沼間で一桁以上の差があることが判明した。
このような水の光透過性の差により、湖底に到達する総エネルギー量に加え紫外線到達割合や光スペクトル組成(色合い)に多様性が生じていた。それぞれの湖で繁殖していた藻類群集の群集表面を透過するエネルギー量とスペクトルの多様性についても解析結果を紹介し、藻類群集の応答と多様化について考察する。