| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) E2-20 (Oral presentation)
はじめに:林床に生育している多年生草本には、栄養成長期には地上茎がなく、根出葉からなるロゼット型(広義)の地上部を形成し、繁殖期へ移ると、開花茎となる地上茎を伸長させるものがある。バイケイソウは、これと似て、栄養成長期には根出葉のみからなる地上部を持つが、その根出葉が偽茎を形成する点で、他の植物と異なっている。バイケイソウには繁殖期には開花茎を持つが、花茎を持つという点を除ければ外観からは偽茎と区別できない。そこで、偽茎と開花茎での力学的特性と寿命の関係の違いを調べ、両者の関係を検討する。
材料と方法:バイケイソウの偽茎と開花茎について、寿命、茎の弾性率、倒伏安全係数を測定した。
結果: 寿命は偽茎より開花茎のほうが長かった。偽茎は7月初めには枯れて、その後倒伏した。一方、開花茎は秋に枯れ、その後、少なくとも11月終わりまで立っていた。弾性率と倒伏安全係数は開花茎のほうが大きかった。
まとめ:開花茎は偽茎より寿命を長くして、偽茎が枯れたあとも、開花、結実、種子散布をしなくてはならない。とくに、種子散布は枯れたあと行なう。葉を展開してから種子散布が終わるまでのあいだに起きるであろうことに耐えて直立しつづけるには、高い倒伏安全係数が必要であり、大きな弾性率によって実現しているものと考えられる。一方、高い安全係数を必要としない偽茎は、茎への投資を少なくしながら葉を高い位置に保ち、林床で他の植物の下になること避けているものと考えられる。