| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) E2-25 (Oral presentation)

樹形のパイプモデル理論におけるF(z)-C(z)関係に関する一考察

小川一治(名大・生命農学)

単木の樹冠頂部から深さzでの非同化重量をC(z)、また、zまでの積算葉量をF(z)とした場合のパイプモデル理論におけるF(z)-C(z)関係が既報の4樹種(ヒノキ(n=5)、スギ(n=6)、カラマツ(n=20)、シラベ(n=16))の層別刈り取りのデータを用いて吟味された。

F(z)-C(z)関係は非直角双曲線式で全C(z)域において近似され、その曲線の初期勾配はグラフから判断してF(z)が一定となるまでのC(z)域において直線とみなされ、本解析においては比パイプ長に相当すると考えた。この比パイプ長は個体間でばらつき、両対数軸上で比パイプ長と生枝下高幹直径の2乗と正の傾き(巾指数)を持つ巾乗関係で近似された。

この比パイプ長の単木サイズ依存性を考慮すると、単木葉量と生枝下高幹直径の2乗との相対成長関係における巾指数は理論的に1より大きくなることが誘導された。従って、単木葉量と生枝下高幹直径との相対成長関係における巾指数の値は通常2より大きくなると言える。

しかしながら、この相対成長モデルでは、実際のデータで調べてみると、単木葉量と生枝下高幹直径の2乗との相対成長関係における巾指数の値は1から有意な差は認められず、単木葉量は生枝下高幹断面積に比例する傾向にあった。このことは、パイプモデルの樹木への有効性を示す証拠と言える。

また、単木間での比パイプ長の差の生物学的意味についても考えてみた。その結果、単木間での比パイプ長の差は同じ非同化部重C(z)での積算葉量F(z)の違いに相当することとなり、林木個体間の相対的な葉量の違いを示し、林分の林冠構造を示す1つの示数とみなすことができると推論された。


日本生態学会