| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) F1-03 (Oral presentation)
これまで、植物はある特定の防御形質に依存して身を守っていると考えられていたが、近年多くの植物種において防御形質を複数備えていることが報告されている。植物の防御戦略を理解するためには、それらを如何に組み合わせて身を守っているのかを明らかにする必要がある。本研究では、トリコーム(物理的防御)、腺点(化学的防御)、花外蜜腺と食物体(生物的防御)、被食耐性といった複数の防御形質を備えるアカメガシワを材料とし、主要な生育場所(開放地、林縁部、ギャップ)の光および土壌養水分環境に応じた防御戦術の変異を調べた。その結果、明るく土壌水分が少ない開放地では、トリコームと腺点を発達させていた。一方、半日蔭で土壌水分がやや豊富な林縁部では花外蜜腺を、暗く土壌水分が豊富なギャップでは食物体を発達させており、それらの生育地では開放地よりも多くのアリが来訪していた。ハスモンヨトウ幼虫に各生育地由来のアカメガシワの葉を与えた結果、開放地由来の葉で林縁部とギャップ由来の葉よりも摂食量と成長率が低く、物理・化学防御形質による効果が高いと考えられた。一方、各生育地におけるアリ除去実験の結果、アリによる植食者排除効果は開放地よりも林縁部とギャップに生育する株で高いことが判明した。人為被食処理実験により各生育地条件下で被食耐性能力を評価したところ、林縁部環境で最も高かった。次に、アカメガシワ実生を用いて光条件と土壌水分条件を人為的に操作した栽培実験を実施した。その結果、アカメガシワは光および土壌水分条件に応じて可塑的に各防御形質への投資量を変化させることが明らかとなった。これらの結果は、アカメガシワが生育地の利用可能な資源の種類や量に応じて各防御形質の組み合わせを可塑的に変化させ防御を達成していることを示している。