| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) F1-07 (Oral presentation)

植食者に媒介される植物の病気のダイナミクス

*仲澤剛史(台湾大・海洋), 山中武彦(農環研),浦野智(ペコIPMパイロット)

多くの植物は植食性昆虫を介して病気に感染する。植物の病気のダイナミクスを理解するため、本研究では消費者-資源(植食性昆虫-植物)相互作用と病気感染プロセスを組み合わせたシンプルな数理モデルを提案する。モデルでは、病気は「感染昆虫」→「未感染植物」と「感染植物」→「未感染昆虫」と双方向的に媒介されると仮定した。モデルを解析した結果、以下のことがわかった。(1)植食者が未感染植物を好んで利用すると、病気は存続しやすい。(2)植食者が感染植物を利用する傾向が強い場合、双安定状態が生じて、システムは初期条件に応じて病気が存在する状態と存在しない状態のどちらかに収束する。(2)の結果は特に重要である。なぜなら、たとえ初期の侵入が難しくても、病気がいったん定着すると存続し続けることを示唆する。したがって、初期の侵入条件に着目したR0域値ルールに基づく病害管理は必ずしも成功しないかもしれない。このような状況は、感染によって植物の餌としての質が向上し、植食者が感染植物を好んで利用するとき、つまり植食性昆虫と病気の間に間接的な互恵関係があるときに生じる。本研究の結果は、植物の病気をうまく管理するためには生態学と疫学のアプローチを組み合わせ、植物―病気―植食者(媒介者)の三者間の相互作用を考えることが重要であることを示す。


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