| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) F1-08 (Oral presentation)
1個体の宿主と複数の共生者個体の間の相利共生(一対多相利共生)は、種子捕食送粉共生系やマメ-根粒菌共生系などで典型的にみられる。このような系は宿主のみがパートナー選択が可能であるという非対称性から不安定になりやすいと予想される。しかし実際の相利共生系は長期間安定に存続しており、かつ、宿主へ全く貢献しない共生者(寄生者)も共存している。今回の研究では、このような系が宿主の共生者選択の不完全さによって維持されていると考え、宿主の共生者選択にコストがかかると仮定した簡単な数理モデルを用いて、宿主と共生者の形質の共進化動態を数値的に解析した。その結果、以下のことが明らかになった。
(1) 宿主と共生者の形質は周期的に振動した。これは、宿主の共生者選択によって共生者の変異が減少し、それによって共生者選択の利益が減少すると、共生者選択が弱まるので再び共生者の変異が増加する、というサイクルを繰り返すからである。(2) 共生者選択をまったくしない宿主が出現した。これは、コストをかけて共生者選択をする宿主によって共生者の協力度がある程度以上に保たれる結果、共生者選択をしなくても相利共生の利益が得られるからである。共生者選択をしない宿主は、共生者選択をする宿主に対するフリーライダーと見なすことができる。(3) 外部から共生者の流入を加えた場合、系の振動は大きく抑制されうる。これは、流入があると共生者の変異がそれほど減少しないため、共生者選択の利益が保たれるからであると考えられる。