| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) F1-09 (Oral presentation)
植物の種多様性は,系統群間で一様ではなく,種数の多い系統もあれば,同じような年代に起源していても種数がはるかに少ない系統も存在する。系統群ごとの種数の違いはしばしば多様化率の違いによって説明され,多様化率に違いをもたらす形質(左右相称花,動物媒花,自家不和合性など)は鍵革新と呼ばれる。しかし,種の多様性はそれぞれの系統群の植物が生育することのできる地理的範囲に制限されるため,その範囲内における「種の収容力」に近づくにつれて多様性は頭打ちになるはずである。よって,もしある系統群において新しく獲得した形質が,その系統群全体の地理的範囲を広げたり,地域ごとの種数を増加させることによって「種の収容力」を高めるように働くならば,こうした形質は高い種多様性をもたらすであろう。コミカンソウ科コミカンソウ連では,種特異的なハナホソガ属(ホソガ科)のガによって送粉される植物は,そうでないものと比べて種多様性が高い。本発表ではコミカンソウ連において種の多様性に影響を及ぼすと考えられるさまざまな要因を検討した上で,ハナホソガによる送粉が植物の生殖隔離を促し,各地域に共存できる種数を増加させることによって,系統群全体の種多様性に貢献していると考えられることを示す。鍵革新は種分化率そのものを高める場合もあるが,「種の収容力」を増加させることで種多様性を高める場合も少なくないのではないだろうか。