| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) H3-29 (Oral presentation)
里山地域においては市民参加による管理なども試みられており、管理指針の策定には過去の生態系についてのより具体的なイメージが必要となる。里山と言っても植生も管理も全国同一ではなく、地域差がある。千葉が「はげ山の文化誌」で示したアカマツの疎林、あるいは「武蔵野の雑木林」などナラ林の世界がどの程度の広がりを持つイメージなのかを明らかにすることを目的とした。
本研究では明治前期産業発達史資料として刊行された勧業寮編纂の「明治7年府県物産表」により全国的な里山生態系の類型化を試みた。特に、材料として森林生態系への依存の高い菌類に着目し、中でも情報量が多く、さらに必要な生態資源の異なる5つの菌に着目した。1)マツタケ マツ科樹種と共生、鉱質土壌内で菌根を形成し、林床まで強度に利用された環境を必要とする 2)シイタケ 本来はシイの倒木腐朽菌。明治7年頃はナラ類のホダ木に鉈目を入れてつくる半栽培的段階。 3)ハツタケ 同様にマツ科樹種と共生、特に若い林分によく出現する。土壌についてはマツタケより要求が低い 4)マイタケ ミズナラなどの巨木の根際に発生。当時は栽培不可 5)イワタケ 岩尾根などに生える地衣類
これらの各都道府県の産出量を調べ、上位府県を調べると、イワタケをのぞいて分布傾向ははっきりと分かれ、関西—中国地方を中心にAマツタケ地域が、関東から東北にかけてのA’ハツタケ地域、太平洋岸から九州にかけてBシイタケ地域が、東北から中部にかけてCマイタケ地域が区分できた。なお、イワタケについては高山を有する都道府県に点在し、低標高地域を区分する上記の類型とは別な傾向を示した。これらはA関西などの草山型里山、A´関東の切替畑などのアカマツ林 Bナラ類薪炭生産地域、Cミズナラなどの奥山がひろがる地域に対応するのではないかと考えている。