| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) H3-30 (Oral presentation)

縄文以降の人間活動の履歴が哺乳類の分布パターンに与えた影響

*深澤圭太(国環研), 赤坂卓美(北大院・農)

太古の昔から続く人間活動の歴史は、生物多様性のパターンを形作った1つの要素である。日本においては、人口分布および自然資源利用の形態は時代とともに大きく変化したことが知られており、生物相に対する人間活動の影響はそれぞれの時代で異なっていた可能性がある。

本研究では、森林の改変や狩猟などの人間活動と強い関係がある陸生哺乳類を対象に、人間活動が全国分布に与えた影響を時代別土地利用タイプ別に推定した。現在の哺乳類の分布として、「環境省第5回自然環境保全基礎調査 種の多様性調査」における属レベル・2次メッシュ単位での発見/未発見を、時代別の人間活動の指標として、「遺跡データベース(奈良文化財研究所提供)」から得た遺跡の密度分布を用いた。遺跡から読み取れる土地利用のタイプとして、集落・製鉄(たたら場)・製陶(窯)の3種類を考慮した。

ロジスティック重回帰分析の結果、中世~近世の製鉄・製陶がトガリネズミ属やモモンガ、ヤマネなどの森林性小型哺乳類に対して強い負の効果を与えていたが、タヌキ、キツネ、イタチ属、イノシシ、ノウサギ属に対しては正の効果が検出された。また、キクガシラコウモリ属、アブラコウモリ属、クマ属、ニホンカモシカ、リス属については、古墳時代(約1500年前)の負の効果が検出された。これらの効果は、より最近の人間活動を考慮してもみられた。現代の土地利用による負の効果はそれ以前のものに比べると総じて低かった。過去の土地利用の履歴は、現在の土地利用の影響よりも強く哺乳類の分布を規定し、かつその影響は長期間残存する可能性が示唆された。


日本生態学会