| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) H3-33 (Oral presentation)
世界規模の気候変動が予測されており、これにより自然環境にも様々な影響が起きると考えられている。その中でも高山は特に気候変動に脆弱な環境である。日本と同緯度の世界の山岳においては、高山植物は標高2500~5000mに分布しているが、日本においては1500m(八甲田山)という低い標高でも高山植物が存在している。これは多雪や世界的にもまれな強風といった気候条件によるところが大きい。
気候変動に伴い高山植物が減少すると予想できるが、適応策を練るうえで種や環境(山地)の脆弱性に関する情報が必要である。そこで日本の代表的な高山植物について現在の分布データから統計モデルを構築し、気候変動シナリオに基づく高山植物の分布変化を確率的に予測することが本研究の目的である。高山は詳細な調査が困難な環境であるので、取得が比較的容易な在・不在データを用いて簡便なモデルを作ることを目標とした。
標高、地質、気候を考慮し、東日本の10個の山系を調査地とし、1山系につき25~91地点で、観察された種名、土壌の基質、地形、周辺の植生の高さを記録した。調査地点は、登山道中心に合計439地点である。得られたデータの内、20地点以上で観察された56種について解析を行った。
分布に影響を与える要素として気温、降水量、積雪深、土壌の基質、地形、周辺の植生の高さなどを考慮し植物種ごとに統計モデルを作った。
IPCC第四次報告書のシナリオから将来の気温、降水量、積雪深を推定し、土壌の基質、地形は現在と同様であると仮定した。また、周辺の植生の高さについて高山植物の統計モデルと同様にモデルを作り、得られた予測値を用いた。
これらの結果を用いて、(1)森林限界上昇による草原植生の衰退、(2)積雪(量、期間)の減少による雪田植生の衰退、の2点に注目して考察を行う。