| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(口頭発表) J2-20 (Oral presentation)
チュウサギは田んぼを餌場として利用しているため、水田耕作(農法)の影響を受けやすく、農業の集約化と農薬の影響により全国的にチュウサギが激減した時期があった。近年は化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業(環境保全型農業)の取り組みがなされてきおり、次第に広がりをみせつつある。環境保全型農業がチュウサギの生息環境に影響を与える可能性があると予測されるが、これまでにこの関係を詳細に研究された事例は少ない。本研究では、環境保全型水田を含む複数の水田タイプにおけるチュウサギの餌生物量を比較し、チュウサギの保全を図る上で有効な水田管理方法について考察を行った。
調査対象地は、滋賀県高島市安曇川コロニーを中心とした農業地帯に設定した。この地域では、現在、農薬・化学肥料の使用量の大幅な削減や不使用という、チュウサギ保全のみならず生物多様性の保全面で非常に重要な取り組みを実施している区域が存在する。調査期間は、2012年5月から8月とした。各調査地(慣行農業、環境保全型農業、土水路を有する水田環境等)において、水生昆虫類、魚類、両生類などの生物量を調べるとともに、チュウサギの個体数、水田の湛水状況、農薬・化学肥料の使用状況、田植えの日にち等を記録した。
その結果、水田内の水生昆虫の生物量は季節間で異なる変化が見られ、これは農法ごとの水田管理と関係があると考えられた。多様な水田管理を行うことは、チュウサギの保全に影響を与えるものと推測された。