| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-065 (Poster presentation)

雌雄異株植物において開花フェノロジーの性差はなぜ存在するのか?

*松久聖子, 丑丸敦史(神戸大・人間発達環境)

雌雄異株植物の性的二型性の中で、繁殖特性における開花スケジュールについては、あまり研究が進んでいない。本研究は、モチノキ科モチノキ属の3種であるソヨゴ、イヌツゲ、ウメモドキを対象に、開花スケジュールの特質において、特に個花の寿命と開花の同調性になぜ性差が生じるのか、花のディスプレイサイズと訪花数の関係に注目して明らかにすることを目的とした。

一般的に、メスは、ディスプレイサイズに対する訪花数が加速もしくは比例増加することが多いため、長い寿命の個花を高い同調性によって開花させ、大きなディスプレイサイズを維持することが適応的だと予測される。一方オスは、ディスプレイサイズに対する訪花数が頭打ちになるために、短い寿命の個花を低い開花同調性によって入れ替えるのが適応的だと予測される。これらの仮説を検証し、ディスプレイサイズに対する雌雄の繁殖成功も確認した。開花スケジュールは、個花の寿命、開花の同調性に加え、一日あたりの最大開花数、開花開始、開花継続期間も調べた。

開花スケジュールの性的二型性は、予測どおり、雌は長い個花の寿命&高い同調性、雄は短い個花の寿命&低い同調性であった。ディスプレイサイズに対する訪花数(シュートあたり・花あたり)は、メスは比例増加・一定、オスは減速増加・減少であり、予測どおりであった(ソヨゴとウメモドキ)。雌雄の繁殖成功については、ディスプレイサイズに対する結果率は増加(ソヨゴとウメモドキ)、花粉の持ち去られ量(ウメモドキのみ調査)は減速増加であった。以上の結果から、開花スケジュールの性的二型性は、雌雄それぞれにとって適応的であると考えられる。


日本生態学会